コラム

Column

高性能住宅をつくるには?

外張り断熱と柱間充填断熱高性能住宅ってどんな住宅?

高性能住宅は室温を必要以上に上げなくても快適に過ごす事が出来ます。室内の上と下で温度差が1~2℃以内には収まります。

断熱の最大の目的は室内の壁・床・天井表面温度をいかに上げられるかと言う事です。この温度が維持されるとそこから輻射熱(放射熱)が出ていて性能の高い家ほど室温と表面温度が近似値になります。逆に性能が悪い家は暖房してもその熱がどんどん逃げていってしまうため室内の表面温度が上がらず、そこからの輻射熱が得られない為、室温を一生懸命上げる事になります。結果上下の温度差も大きくなり足元が寒くなります。結局不快な暖かさ(場合によっては暖かくならない事も)と余分な暖房費を消費してしまいます。

これは例えばガラス張りの部屋でガラス表面の温度が10℃で室温が25℃ある部屋と、壁の表面温度も室温も20℃の部屋とではどちらが快適だと思いますか?(後者のほうが快適でしょう)

なぜ断熱が必要?

現在CO2削減といった国を挙げての省エネルギーが叫ばれている中、断熱性能を上げ民生分野のエネルギーを減らすという社会的な役割として重要になっていますが、なんと言っても住む人の快適性が驚くほど改善されるのが断熱化です。また光熱費の削減も図れれば家計に与える影響も少なくありません。快適性と低いランニングコストを同時に享受できるのですからこの性能部分を考える事は大変重要だと思います。

特に住宅の性能にかかわる基本的な部分は後からやり直すということは難しいものです。(出来ないというわけでは有りませんが・・・)表面に見える部分や設備部分はどのみち10~15年も経てば取替えやリフォームが必要になりますし、後からでも変更するのは可能です。しかし家の基本性能(耐震性や断熱性能等)はかなり大掛かりな事をしないと改善は難しく出来たとしても中途半端だったりしてしまいます。

人それぞれ家に対する思いはありますし断熱だけで家が建つわけでは有りませんので、必ずしも断熱が一番であるとはいいきれませんが、重要なファクターである事は間違いありません。

断熱材にはどんなものがある

断熱材は大きく繊維系と発泡系に分けられます。繊維系ではグラスウール・ロックウール・セルロースファイバー。発泡系では熱可塑性(熱を加え溶かし冷やしながら成型加工するプラスチック)であるポリエチレンフォーム・押出法ポリスチレンフォーム・ビーズ法ポリスチレンフォーム、熱硬化性(熱を加えることにより固まるプラスチック)である硬質ウレタンフォーム・フェノールフォーム等があります。また形状によってマット状、ボード状、綿状に分けられます。

形状
マット・ボード・綿状等
材質
鉱物系・石油化学系・自然素材系等

グラスウール

ガラスを原料としそれを細い繊維状にし熱硬化性樹脂などの接着剤で加熱成型される。形状は住宅用で主にマット状にされるがボード上のものもあり外張り断熱用もある。

ロックウール

鉱石から人工的に作られた耐熱性の高い鉱物繊維。グラスウールよりも耐火性能を持ち、密度が高いので防音性も高い。形状はグラスウールと同様でマット状・ボード状がある。

セルロースファイバー

新聞古紙等を再利用し綿状にしたエコロジー断熱材。形状がマット・ボード状ではなく、現場にて専用機械で吹込み施工を行う。エコロジーで吸放湿性を持つのが大きな特徴。

高発泡ポリエチレン

ポリエチレンを発泡させたボード状断熱材。断熱性能は繊維系断熱材の性能がいいものより若干低い。火には大変弱い。

ポリスチレンフォーム

ポリスチレン樹脂を発泡させてボード状に成型した発泡断熱材。一般的に繊維系断熱材よりも断熱性能がよい。水分による影響が少なくコンクリート打ち込みや基礎断熱にも使用される。火には弱い。近年は外張り断熱用途も増加。

硬質ウレタンフォーム

優れた断熱性があり接着性も高いので様々な加工方法があり住宅用途以外に冷蔵庫やプラントでも多く使用されている。現在マンションなどでは結露防止として殆どが現場発泡で施工されている。住宅用としては、現場吹付、外張り断熱用としてボード状にしたもの、パネル化してパネル工法にしているものがある。前述の発泡系断熱材より熱に強いがやはり火気は注意。

フェノールフォーム

フェノール樹脂をやはり発泡させて製造する。断熱性能は発泡形の中で最も良く不燃性も高い。ボードの強度が弱く取り扱いには注意が必要で水に弱い。また鉄を酸化させる可能性があるので接触部には専用のビスが必要。

上記にいろんな断熱建材をご紹介しましたが、断熱材の代表選手はなんといっても皆さんも良く知っているグラスウールでしょう。しかし最も評判の悪いのもグラスウールなのです。

ではなぜグラスウールが駄目の代表選手に選ばれてしまったのでしょうか?

主な理由は施工にあります。グラスウールは最も安価な断熱材として多く使われてきましたし現在も使用されています。しかし形状がマット状であり施工部位が柱間に充填するタイプであった為、かなりの施工技術が必要でしたが、安易に大工さんによる施工が行われたため性能が発揮できていないのが現実です。
実際に筋交いや配線・配管・各種の下地などの多くの障害物がある壁内に、マットを隙間無く施工するのがいかに大変か皆さんも実際に施工してみればわかると思います。グラスウールも完全な施工が出来ればそれなりの性能を発揮しますが、それが非常に大変で難しい事なのです。

たとえば施工の精度が5%悪いだけで性能は56%、10%悪いと性能は13%とどんなに断熱性能が高くても効果を発揮してくれないのです。例えるなら、冬に窓が少しでも開いていると寒いのと同じことです。また、グラスウール等の鉱物系の断熱材は湿気が壁内に入らないように防湿シートを張らなければなりませんが、その防湿シートを完全に施工するのがまた大変であり、施工自体がおろそかになってしまっている例が多くあります。

その結果、湿気が壁内に入ってしまい壁体内結露を起こし建物を腐らせたりカビの発生を起こしたりしてしまいます。そこで最近流行ったのが柱の間に断熱材を施工する方法ではなく、ボード状断熱材を用いて柱の外側に断熱材を取り付ける外張り断熱工法だったのです。断熱材は施工方法によって外張り断熱と柱間充填断熱に分けられます。

最近誤解が多い例で、外断熱・内断熱という呼び方がありますが、これは鉄筋コンクリート造建築物の場合の呼び方で、木造の場合とは異なります。駆体(コンクリート)の外側に断熱を施すものが外断熱、駆体の内側に施されるのが内断熱と呼ばれます。鉄筋コンクリート造において外断熱が理想的な最大の理由は、断熱材が駆体の外側にあるために、駆体のもつ大きな熱容量を利用する事ができ室内の温熱環境が外気に非常に影響を受けにくい環境を作る事ができる事です。マンションの中間戸が暖かいのは以上の理由からなのです。木造の場合は断熱材を柱の外側に取り付けるか、柱間に取り付けるかの差ですので鉄筋コンクリート造でいう駆体(コンクリート)が持つ熱容量を利用出来るというメリットはありません。

外張り断熱と柱間充填断熱

外張り断熱はその断熱材の施工において柱の外側に取付します。これが前述の柱間充填断熱では難しかった断熱の施工が、大工さんでも障害物が無い状態で施工が出来るので、住宅の高性能化が図りやすい工法のひとつになったのです。では柱間充填断熱は駄目なのか?外張りで無いと駄目なのか?そんなことはありません。それが、マット状でなく綿状の断熱材を隙間無く施工できるセルローズファイバー乾式吹込み工法なのです。

セルロースファイバー断熱材について

今まで様々な断熱材が持っていた問題点をクリアーしつつ、エコロジーで他多くの特徴や効果を持つセルロースファイバー断熱材について下記にまとめまてみました。

吹込みという方法で行われるため施工の精度が100%得られる事がまず大きな特徴です。ですから当然断熱効果も100%得る事ができます。そして材料は新聞古紙を再利用して作られており、安全・エコロジーで、製造から廃棄までの使用エネルギーも非常に小さく地球環境に負荷を与えない材料です。

湿気の吸放湿性能を持っている呼吸する断熱材といえます。これにより壁体内の結露を防止し、室内の湿度環境も影ながら安定させる効果を持つ呼吸する壁といえるでしょう。

防音性能にも大変優れておりこれは材料密度が60kg/m3と非常に高いため特に中・高音域では非常に大きな効果が得られます。それにより上下階の防音や趣味の部屋の防音等さまざまに応用する事が可能です。

外張り断熱工法のような、外装材の種類の選定や、建物形状が複雑になることによる収まりの工夫の心配をしないで、従来通り自由に設計できる。また断熱の厚みも容易に増やすことも可能なのもメリットです。

防火性能:バーナー等で火を当てると表面が炭化してそれ以上中まで燃えません。これは焚き火の中に分厚い雑誌を入れても表面は良く燃えますが中身はよほどかき回さないと最後まで燃え残っている事から解ると思います。これにより隣家からのもしもの火災に対して燃え移る可能性を大きく低減させてくれますし、また自宅から発生した火災も隣家まで燃え移らせにくくなります。もしものときのほんの数分間で大事なものを守る事が出来れば心強い事でしょう。実際に延焼を防止できた例も少なくありません。

セルロースファイバーの唯一の欠点は経年の沈下です。弊社ではその沈下を抑えるため、麻の繊維を混入させる事により材料内で格子形成を成し材料の沈下を支える効果を持たせた材料改質と、適切な施工が可能な自社社員体制による施工でその問題を解消しました。吹き込んで直後には沈下している現場の噂も時折聞きますので確かな施工を見極める必要があると思います。これは工務店さんを選ぶときも同様、皆さんが大工さんや現場を確認して参考にするのと同じ事です。

冷暖房費を大幅に抑えられかつ、快適な住まいを得る事ができる工法です。例えば、「夏場の冷房については通風を工夫する事により殆ど使わないですんだ」「冬場も、朝暖房をちょっとつけるとその熱が残るので暖房もあまり使わなくてすむ」その他にも「外部からの防音効果が高いので車や電車の音なども聞こえなくなった」「趣味の部屋で音楽などを気軽に楽しめるようになった」「実際に火災にあって延焼を免れる事が出来た」等の反響があります。

建物はトータルバランス

いろいろと断熱について述べてきましたが、最終的に断熱材で家が出来るわけではありません。いくら断熱が良くても窓による通風・採光や夏場の日射遮蔽もあわせて考えなければ快適な環境は人工的なものだけでは得られません。特に窓の断熱性能は非常に重要です。またどんなものにも長所・短所があり最適な組み合わせを考えなければいけません。それは工法・形状・施工部位・施工条件・職人の技能・コスト・コンセプト・ライフスタイル・生活条件・立地・建築条件等さまざまな要素があります。建築は適材適所を求めるもので完璧ということはありえませんが、少しでも理想に近づけるために最適な組み合わせを見つけ、満足のいく家づくりが出来る事を願ってやみません。

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