湿度管理という観点は住宅の健康を考える上で避けて通れない問題です。特に湿度が高い環境では、カビなどが繁殖しやすくなり、住宅内の健康被害や建物の劣化を招きかねません。こうした課題に対処するためにも、適切な断熱材の選択が重要です。その中でもセルロースファイバーは調湿性能に加えて、含まれるホウ酸による防虫・防カビ効果を持つことで、住宅の健康と耐久性を向上させてくれます。
カビの発生と湿度管理の重要性
住宅内の結露はカビが繁殖する主原因です。冬場は、湿度が高くて暖かい空気が、冷えた壁や床・窓などの表面に近づくと空気が冷やされて飽和水蒸気量が低下し、表面結露することで湿った環境が形成され、カビの成長に適した条件が整います。カビは健康被害を引き起こすだけでなく、建物自体の劣化や見た目の悪化も招くため、いかに防止するかが重要です。特に、壁内の内部結露を引き起こした場合は、目に見えないため長期間湿った状態が続き、カビのリスクもが高まります。
カビの健康被害と壁内結露
カビが発生すると、その胞子や微細なカビの破片が空気中に放出されます。特に壁内結露によるカビは、発見が難しく、長期間にわたってカビの胞子を吸い込むことになります。これが、シックハウス症候群やアレルギー症状、喘息などの呼吸器系の疾患を引き起こす可能性があります。欧州ではこのようなカビによる健康被害を「サイレントキラー」と呼び、その影響の深刻さが認識されています。
カビだけではない壁内結露の弊害
壁内結露の弊害はカビだけにとどまらず様々な問題を併発します。
断熱性能の低下
断熱材の性能は乾燥していることが大前提です。服が濡れると寒く感じるのは水分が空気の30倍熱を伝えるからです。内部結露が発生すると断熱材が水で濡れた状態になる為断熱性能が低下し、更に結露が起こりやすくなる悪循環に陥ります。また結露水を吸って重くなった断熱材はずり落ちやすくなります。
住宅の寿命が縮まる
長期間湿った環境が続くため、構造体である木材が空気中に漂っている木材腐朽菌によって腐ります。また、木材が腐ることによってシロアリ被害の発生リスクも高まり(シロアリは腐った木材のにおいに敏感なため)、住宅の耐久性はますます弱まります。阪神淡路大震災で半壊・全壊した住宅の半分以上はシロアリ被害にあっていたというデータもあります。住宅の耐久性が低い状態ですと、万が一の地震が発生した際に、住宅の崩壊に巻き込まれる恐れがあります。
セルロースファイバーの湿気の吸放出性能
現在、一般的に使われているグラスウール断熱材は、壁の中へ水蒸気が進入すると内部結露を起こし易く、結露には大変弱い特性です。またマット・ボード上の断熱材は筋交いや配管まわりで隙間なく施工がすることが大変難しく、施工時に生じた隙間も、断熱性能を低下させ内部結露が起きやすくなる要因の一つとなっております。一方、セルロースファイバーは、新聞紙などの古紙を原料として作られる断熱材であり、その最大の特徴は湿度調節能力です。木材由来のセルロースファイバーは、木が本来持つ呼吸や吸放湿性能を継承しており、湿度の変動に柔軟に対応します。湿度が高い状態では湿気を吸収し、乾燥するとその湿気を放出します。また充填工法のために、複雑で入り組んだ空間でも隙間なくぎっしりと施工することが可能です。この特性により、室内の湿度を安定させ、内部結露の発生を抑制する効果を発揮します。
ホウ酸のカビ抑制効果
セルロースファイバーには、カビや木材腐朽菌の発生を抑制する効果があるホウ酸が含まれています。ホウ酸は微生物に対して有害な作用を持ち、その成長を妨げる役割を果たします。特に、湿度が高くカビが繁殖しやすい環境では、ホウ酸の効果がカビの発生を抑制する一翼を担います。これにより、セルロースファイバーは湿度管理だけでなく、ホウ酸の力も借りて住宅内でのカビの発生を抑制します。
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まとめ
セルロースファイバーは湿度管理の面での優れた性能と、含まれるホウ酸によるカビ抑制効果が相まって、住宅の健康と耐久性をサポートします。その他にも、再生可能な素材を使用しているため環境に優しい特性や、高い断熱性能によるエネルギー効率の向上などのメリットもあります。カビ対策だけでなく、エコロジカルな選択と快適な居住環境の実現に貢献するセルロースファイバーは、今後ますます注目を集めるでしょう。
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