近年住宅を建てる際に、断熱材を重視する人が増えてきています。2025年からの断熱等級4の省エネ基準義務化や、2021年に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」では2030年度以降新築される住宅についてZEH基準の省エネルギー性能の確保を目指すことが謳われるなど、住宅の省エネと密接な関係のある断熱材に社会全体の関心が高まっていることが背景のひとつとしてあるでしょう。セルロースファイバーもそんな注目すべき断熱素材の一つです。ここではホウ酸を含むセルロースファイバーがゴキブリやシロアリに対してどのように有効なのかを解説していきます。
目次
セルロースファイバーに含まれるホウ酸の効果
セルロースファイバーは、新聞紙や古紙を主成分とする断熱材です。これに防燃材としてホウ酸が混ぜられておりこの成分が防火・防虫の効果をもたらしています。ホウ酸とはホウ素のオキソ酸の総称を指し、これが害虫に食毒作用を発揮する成分です。（ちなみに木材腐朽菌やカビに対しても効果があります。）虫がホウ酸を摂取すると細胞の代謝が停止して、それによって殺虫するメカニズムです。本来、シロアリは木材を好んで餌とし、住宅の壁や柱に被害を及ぼすことがあります。また、ゴキブリにとっても木材で出来た隙間は暖かく、寝床になりやすい傾向があります。しかし、セルロースファイバーにはホウ酸が含まれている為、万が一害虫がセルロースファイバーの中に侵入したとしてもホウ酸が体中に付着し、害虫はそれを舐めて食毒を起こし死ぬため繁殖を防ぎ、近づきにくくするという効果があります。そういう意味では他のグラスウールなどの一般的な断熱材を使用するよりは害虫に対する抵抗力は高い断熱材ということができます。
害虫に耐性はできたりしないの？
よく殺虫剤を使っているとゴキブリなどは世代交代とともに殺虫成分に対して耐性をもつ個体が増えてきて、そのうち効果がなくなってしまうという話があります。俗にいう「耐性ゴキブリ」というものです。しかし、ホウ酸の場合は細胞の代謝というものに直接作用するものなので、害虫がこれに対して耐性を獲得することはなく、摂取さえしてしまえば必ず食毒として効果を発揮します。
セルロースファイバーの調湿性の高さも一役買っている
また、セルロースファイバーの特徴の一つに調湿性の高さがあります。基本的にゴキブリもシロアリも高温多湿の環境を好む傾向にありますが、セルロースファイバーの壁体内は比較的温湿環境が安定しやすい傾向にある為、ホウ酸の効果と相まって害虫にとって住みにくい環境となっています。
セルロースファイバーの防虫効果はあくまで副次的
しかし、セルロースファイバーに含まれるホウ酸はもともと、防火性能を上げることを主目的としており、防虫効果はあくまで副次的な効果であることを認識しておく必要があります。特に日本在来のシロアリの場合は断熱材の中を通らなくても木部の中や蟻道を形成することによって壁の外側から断熱材を経由せずに木部に到達し巣を作ることが可能です。また、中には地面からではなく羽アリで直接上階に侵入するようなカンザイシロアリといった種類もあります。もし、シロアリに対して万全な対策を検討する場合にはホウ酸を使った防蟻材の施工を検討することをおすすめします。
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ホウ酸は人体に安全なのか？
昆虫には有毒なホウ酸ですが、哺乳類に対しては万が一摂取したとしても細胞に至る前に腎臓で濾過されるため無害で安全です。致死性も塩と同程度と考えて差し支えありません。ホウ酸は天然の鉱物由来のもので常温で揮発するものではないので吸引する心配もなく、水に濡れることがなければ半永久的にその場にとどまり続け効果を発揮してくれます。また、セルロースファイバーはホウ酸団子とは違い、壁の中にあるものなので、幼児やペットが誤って口に入れて誤飲する心配もありません。
まとめ
セルロースファイバーに含まれるホウ酸はゴキブリやシロアリといった害虫を寄せ付けない効果があります。害虫はホウ酸を摂取することで代謝を停止し食毒を起こします。また、哺乳類には影響を与えないため、人体やペットにも安心・安全です。ただ、完全にシロアリを防ぎたい場合には別途対策が必要な点は留意してください。快適な住環境を提供するセルロースファイバーは、害虫対策だけでなく、住まいの質を向上させる要素としても大きな価値を持っています。住宅建築やリフォームの際には、セルロースファイバーの優れた性能を活かし、安心で快適な住まいを築く選択肢として検討することがおすすめです。
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