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断熱材のセルロースファイバーとグラスウールの違いとは?

これからリフォームや新築でマイフォームの断熱材選びをする際、どの断熱材が自分のお家におすすめなのかを見極めるのはなかなか悩ましいポイントではないかと思われます。特に今はインターネット上で断熱材についての情報がたくさん出回っており、人によっても意見や考え方が様々です。その中でも熱伝導率の数値が近しいセルロースファイバーとグラスウールは比較の対象となる代表的な組み合わせと言えます。しかしこの両者には、吸放湿性や施工性など、重要な違いがいくつか存在します。こちらのコラムでは、セルロースファイバーとグラスウールの違いについて詳しく説明します。

 

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そもそもセルロースファイバーとグラスウールはどのような断熱材なのか?

先ず、記事のタイトルにある質問に答える前に、セルロースファイバーとグラスウールの概要を簡単に説明します。

 

セルロースファイバーとは

新聞紙の古紙をリサイクルした断熱材です。木と同じような吸放湿性がある天然素材で、高密度で充填するため防音効果や施工精度がとても良く、高い断熱効果を発揮します。また、シロアリやゴキブリなどの害虫が嫌うホウ酸が一定量入っているため、防虫性能や防火性能も良いです。

 

グラスウールとは

ガラス繊維を綿状に固めた鉱物繊維系断熱材で、比較的安いため、日本国内の断熱材シェアの上位を占め多くの工務店や建築設計会社に広く採用されています。また石油系断熱材と比較すると、防火性能と防音性能があります。

 

 

施工精度の問題

 

セルロースファイバーとグラスウールは、実際の施工においては圧倒的に大きな違いがあります。この差は断熱材の形状や施工精度に関連しており、建物の断熱性能に影響を与えます。

 

セルロースファイバー

セルロースファイバーの特徴の一つは、綿状で形状がないため、細かい隙間にもまんべんなく充填できるところです。セルロースファイバーの施工は空気だけが通るような目の細かい不織布を施工面に張り付け、ここに専用の機械をつかって大量の空気とともに断熱材を吹き込んでいきます。これは複雑な空間や構造への施工に適しています。例えば、多くの配線、筋交い、コンセントボックス回りなどがある壁の工事でも、セルロースファイバーであれば隙間をつくりません。そのため、施工箇所は断熱材が均等に高密度で施工され、断熱性能が最大限に発揮されます。

 

セルロースファイバーは断熱欠損しないのか?

よくセルロースファイバーのデメリットとして自重沈下による断熱欠損のリスクが挙げられますが、これはきちんとした沈下防止対策をして施工をすることにより解決することが可能です。

最低1㎥当たり60kg圧で充填施工する株式会社マツナガの沈下対策用麻入りセルロースファイバー「MSグリーンファイバー」は沈下しないセルロースファイバーとして第三者機関の認定を受けております。

 

 

 

セルロースファイバーは屋根だけでも施工すると夏・冬が変わる?

セルロースファイバーは高密度で隙間なく施工できるため、屋根だけでもセルロースファイバー仕様にすることで、他の断熱材で施工した時よりも効果の違いを体感することが出来ます。夏は直射日光により屋根がパネルヒーターのようになるのを抑え、冬は室内の温かい空気が屋根・天井から上に抜けるのをフタするような役割を発揮します。

 

詳しくはこちらのコラムもご覧ください。

 

 

グラスウール

一方、マット・ボード状のグラスウールの場合、施工時には現場でカッターなどで加工し、必要なサイズ・形状に調整する必要があります。特に配線・配管の貫通部のや筋交いのある外壁部分は大変で、もし断熱欠損が発生しないように隙間を埋めて施工しようとした場合、セルロースファイバーと比べると必要な時間や労力は大きくなります。そのため、グラスウールを隙間なく施工するのは現実的にかなり難易度の高いことといえます。

一般的に言えることは、断熱施工において隙間率が全体で5%以上あると、断熱効果が56%まで半減し、10%以上の隙間があると13%まで激減して、ほとんど断熱効果が得られなくなる恐れがあるということです。熱伝導率の単純な比較だけでなく、施工精度が断熱性能に大きな影響を与えることを理解することが重要です。

 

したがって、セルロースファイバーとグラスウールはほぼ同等の熱伝導率を持っていても、実際の断熱性能は大きく異なる場合があります。建物の断熱性能を確保するためには、適切な材料だけでなく、施工の際の精度と注意が欠かせません。建物を「ただ断熱材が入っているだけの家」ではなく、「断熱効果が効いている家」を実現するためには、施工精度に十分な注意を払う必要があります。

 

 

湿気への対応性

セルロースファイバー

新聞紙の古紙が原料であるセルロースファイバーは木質由来の天然素材のため、木材と同じように湿気に対して優れた吸放湿性を持っています。湿度の変化に対応し、湿気を吸収して放湿する能力があることで、室内の湿度や温度が安定しやすい傾向があります。また条件が整えば、防湿層を省略して施工することが可能です。

セルロースファイバーと防湿層についての詳細な説明を知りたい方はこちらのコラムもクリック

 

グラスウール

一方、ガラスが原材料のグラスウールにそのような吸湿性はありません。繊維そのものに吸水性はないですが繊維間の空気が保水する可能性があるので、対策として湿気が侵入するのを防ぐために、施工時には必ずポリエチレンなどで出来た防湿シートで室内全体を覆うように防湿層を設置する必要があります。またこの防湿層が不十分だと隙間から湿気が侵入し内部結露する恐れがあります。内部結露はカビや木材腐朽の原因となり、健康被害や住宅の耐久性が落ちるといった弊害を起こす恐れがあります。

 

 

 

 

 

 


防音性能

セルロースファイバー

 

セルロースファイバーは、専用の機械を用いて高密度で均一に施工されるため、優れた防音性能を提供します。屋根からの雨音や外部の騒音が室内に侵入するのを効果的に防ぎます。特に、外部からの騒音が気になる場合や、静かな居住環境を求める場合には、セルロースファイバーは理想的な選択肢です。防音性能において、セルロースファイバーを60kg/㎥で断熱した家は約10デシベルの透過損失が得られます。これは、外部からの音が半減されるような体感を得られ、静かな居住環境を実現することが出来ます。

 

グラスウール

 

グラスウールも一定の防音性能を持っていますが、セルロースファイバーよりも密度が低いため防音効果もそれに比例することがあります。また、高密度で均一な施工が難しい素材であるため、施工時に隙間が生じていた場合には、本来の防音性能が低下している可能性があります。

 

価格(コスト)の問題

セルロースファイバー

セルロースファイバーは一般的に材工(材料+工事)の費用となり、専門業者の職人が施工を行います。そのため、セルロースファイバーは断熱材の中でも高価な部類に属します。しかし、施工品質は安定しており、高い性能を期待できます。

 

グラスウール

グラスウールは基本的に材料費のみで、大工さんが木工事と並行して施工を行うことが多いです。そのためグラスウールのコストは安く、建築費用を抑えることができます。ただし、施工品質については、経験や施工状況に左右され、安定しないことがあります。(グラスウールでも隙間がなければ断熱効果はあります)

 

要するに、セルロースファイバーは防音性能や吸放湿性、延焼抑制効果などの付加価値が高く、高品質な施工が期待できますが一般的にコストが高いです。一方、グラスウールはコストが低い代わりに施工品質にばらつきが生じることがあります。何千万円もかかる住宅の購入は数少ない人生の大きな買い物のひとつです。住宅に求める要件や予算に応じて、どちらを選択するかを後悔がないよう慎重に検討することが重要となります。

 

環境への配慮

セルロースファイバー

セルロースファイバーは新聞紙の古紙を主成分とし、天然由来の自然素材を添加物として使用します。そのため、環境への配慮が求められる現代社会において、エコフレンドリーな選択肢として注目されています。製造時にかかるエネルギーはわずか14kwh/㎡です。また、高い施工品質により実現される断熱効果の高さから、住み始めてからの冷暖房にかかる電気代を節約することが出来、家計にも優しいです。

 

セルロースファイバーとグラスウールの光熱費の比較についてはこちらのコラムでも解説しています。

 

 

グラスウール

グラスウールはガラスの繊維を主成分とするため、製造時にエネルギーを多く消費し、環境負荷は高いとされており一般的に100~700kwh/㎡とされています。

 

まとめ

セルロースファイバーとグラスウール、それぞれメリットとデメリットがありますが、湿気への対応性、施工精度、防音性能など、選択する際に考慮すべき違いがいくつかあります。どのような暮らし方をしたいのかを考えながら、住宅に求める特性や用途に応じて最適な断熱材を選択することが重要です。

 

ロックウールや発泡ウレタンなどの他の各種断熱材との違いを知りたい方は次のコラムもクリックしてください。

 

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作成日:2023/10/03

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